ビスフェノールA
ビスフェノールAとは…
ビスフェノールA(bisphenol A :4,4’−dihydroxydiphenyl- 2,2 -propane)は分子量:228.29 で、白色の結晶性粉末フレークまたは粉状品です。
アセトン、エーテルなどには溶けやすく、ベンゼン、パラフィン系炭化水素、水には難溶です。
ポリカーボネート製食器
金属管のエポキシ樹脂コーティング
エポキシ塗装のワン
はし などから検出されます。
ビスフェノールAは、エポキシ樹脂、100 %フェノール樹脂や可塑性ポリエステルの原料でもあり、酸化防止剤や塩化ビニルの安定剤としても用いられています。すなわち原料にも添加剤にも使われています。
ビスフェノールAは一般毒性は弱いものですが、エストロゲン受容体に対する結合性を持つことが知られています。低用量である種の野生生物の内分泌系をかく乱する(環境ホルモン)作用が知られています。ヒトエストロゲン受容体への結合活性は弱いものですが、ヒトへの生殖系への影響(例えば、男性精子数減少、女性の子宮内膜症)が証明されたものは現在のところありません。
学校給食の食器
学校給食の食器は、アルマイトとポリカーボネートのものが大半でした。学校で使われている、ポリカーボネート製食器の検査を行ったところ、以前はアルマイト食器が使われていましたが、冷めにくく見た目がよいなどの理由で、ポリカーボネート食器が普及しました。
しかし、内分泌かく乱化学物質の問題がクローズアップされ、社会問題になってから、学校給食からポリカーボネート製はほとんど使われなくなりました。
学校給食ではアルカリ洗剤を用いた機械洗浄が行われ、その後80℃以上で加熱乾燥されますが時には100℃近くになることもあり、しかも毎日繰り返されます。
ポリカーボネートはアルカリ、水分、加熱により酸化分解が促進されることから、ビスフェノールA が増加する要因がそろっています。
しかし、実際に給食器を 120 日間繰り返し使用しても溶出量は 0.6 〜 3.1 ppbであり、食品衛生法の基準値の約 1/1000 以下ときわめて低いものです。
食品衛生法によるビスフェノールAの溶出基準は、2.5 ppm( 2,500 ppb)です。これまでの溶出試験では、検出されたビスフェノールAは ppb レベルなので、学校給食の食器も基準は満たしています。しかし、内分泌かく乱物質は、 ppb や ppt レベルでも影響するので、この基準を満たしていればよいというわけにはいきません。現在学校給食では、自主的にポリカーボネート製の食器から強化磁器食器に変わりつつあります。特に、成長期の子供に強い影響が現れやすいことを考慮した予防的措置がとられています。これからも学校給食で使われる器具・容器包装の選択には、「事実に基づいた」冷静な判断が必要で、影響が不透明な場合には「予防的措置」にも配慮すべきでしょう。
これまでに、ポリカーボネートから溶出するレベルのビスフェノールAがヒトに有害な影響を与えたと確認された事例はいまのところありません。 しかし、微量であっても作用を引き起こすという指摘もあるため、引き続き調査が行われています。
|